【鉄瓶の修理について】知っておきたい修理の流れとコストのお話
鉄瓶の修理専門店として、よくお客様から「修理方法の選び方」についてご質問をいただきます。今回は、修理の種類や流れについて、具体的にお話ししたいと思います。
■修理方法について
鉄瓶の修理には、主に「埋金(うめがね)修理」と「替え底修理」の2種類があります。
当店では、まず可能な限り「埋金修理」でのご対応を検討させていただいています。
なぜでしょうか?
それは、埋金修理が鉄瓶本来の姿を最大限残せる方法だからです。
江戸時代から続く伝統的な技法を用い、漆と鉄、時にはカスガイを使って水漏れ箇所を丁寧に修復していきます。
でも、修理後にまた水漏れすることも珍しくありません。
これは「替え底修理」のサインです。
■修理費用の目安
(※鉄瓶のサイズにより価格は変動いたします)
・埋金修理:3万円 以内 (普通サイズの場合)
・替え底修理:6万円~ (最高でも10万円前後で、大きさ4L特大鉄瓶の場合)
実は、埋金修理後に替え底修理が必要になった場合でも、最終的な費用は6万円と変わりません。つまり、すでにお支払いいただいた埋金修理の3万円に、追加で3万円をお支払いいただくだけです。
※お品物の返送は着払いとなりますので、2回修理となった場合は送料が2回分必要となりますが、修理費用自体は最初から替え底修理を選んだ場合と同じです。
※修理に関する詳細はページの一番下に書き記してございます。ご興味あるから、必要とされる方はそちらもご覧ください。
替え底修理の金額の違いは純粋に大きさによります。
替え底修理でもできるだけオリジナルを残す努力
替え底は、全く同じデザインの底を作り、古い底を切って取り替えます。
そのため外見のデザインは全く同じになります。
外側からはほぼ接合部分はわかりません。
龍文堂などの古く価値ある鉄瓶でも、ほぼ違いがわからないと思います。
刻印ある場合は刻印だけ抜き取り、新しい底に貼り付けます。
鉄瓶を作るよりもずっと困難な作業です。ゆえに「鋳掛屋(いかけや)」にしか出来ない作業です。
■費用に影響する要因について
修理費用は鉄瓶の大きさによって変動します。小さな鉄瓶から大きな鉄瓶まで、それぞれのサイズに応じて必要な作業量や材料が異なるためです。正確なお見積りは、実際の鉄瓶を拝見させていただき、音でも底の厚みを判断します。
水漏れが無くとも底の厚みが薄い場合は替え底をおすすめするケースもございます。
一般的な修理と替え底修理の割合は 8:1くらいです。多くは埋金(3万円前後)で修理が可能です。
■でも、時には替え底修理が必要に
埋金修理を施しても再度水漏れが発生するケースがあります。これは修理の良し悪しではなく、鉄瓶の底の状態によるものです。このような場合、最終的に替え底修理が必要となります。
こちらの図のように、最終的な修理費用は変わりません。
✨️龍文堂などの古い京鉄瓶の修理について
龍文堂などの古い共鉄瓶の場合、替え底が難しいものも存在します。まずはお写真をお送りいただければすぐに判別出来ます。 今まで80近い龍文堂の鉄瓶を修理してきました。
4つほど 龍文堂 本家の鉄瓶も修理させていただきました。
銅フタの修理 部品を紛失した、取っ手が取れた、取っ手が折れたなど
銅蓋のつまみを紛失していまっていても大丈夫。
当時の銅蓋の部品を沢山所持していますので、再生いたします。こちらはプラス1万円〜2万円で対応可能です。
鉄のフタのツマミが折れたケース
銅のフタは京鉄瓶。鉄のフタは南部鉄瓶です。
銅フタのツマミは銅の軸でつながってますが、鉄のフタのツマミは一体型です。
折れた場合は真ん中に1mmの穴を開け、細い針金を通し取れたツマミを接続。固定は漆で行います。接続部分はおそらく分からないと思います。これで鉄のフタのツマミが折れても再生されます。費用は1万円〜2万円以内です。
底がすっぽり抜けても完璧に再生します!
完全に崩壊した鉄瓶の修理アフターの様子。抜けた底を再生し接続しています!
よーーーくみるとうっすら接続した箇所がありますが殆んどわかりません。
鉄瓶の修理に関する詳細
修理方法は2種類ございます。
■ 通常の修理とは?
【埋金修理】
鉄瓶のサビ取りと漆仕上げ。
天然の漆とお茶を混ぜたものを焼き付けながら重ね塗りします。
化学塗料、ケミカル類は一切使用していません。
軽微な水漏れあるケースでは埋金という漆と鉄を混ぜたもので穴を塞ぎます。
底の厚みがあればこの修理で水漏れは止まります。
焼付は金気止めと言って盛岡の鉄瓶にのみほどこされる作業ですが
これにより鉄が錆びにくくなります。
明治時代の盛岡の大火災の焼け跡からでてきた鉄瓶が従来と異なり錆びにくくなっていたことから始まった工程です。
■ 埋金で治らない場合
【替底(かえぞこ)修理】
替え底は、今ある鉄瓶の底を鋳型で複製。
付け替えます。
オリジナルを残すため出来るだけ最初の修理で終わらせますがもしまた水漏れした場合はこちらの修理方法になります。
かなり特殊な修理のため替底修理ができる職人は限られます。
替え底修理は5〜6万円ほどになります。
【埋金修理で漏れたら】
最初の修理のあと水漏れしたら?
差額のみで替え底修理になります。
その他の様々なダメージにも鋳掛屋(戦前まで存在した鋳物修理の仕事名)は対処、修理再生いたします。
■ 大きなヒビで鉄瓶のボディー部分が割れている。
修理可能です。
カスガイという、留め金で止めて縫い付ける感じです。
よほど貴重な鉄瓶、思い出の鉄瓶の場合はボディーが真っ二つになっていても修理いたします。
職人いわく、鋳掛屋を名乗るものとしての維持 出そうです。
■ 蛇口が欠けている。
欠けていたのがわからないくらい自然に修理致します。
こちらもプラス5,000円〜6,000円で対応致します。
■ 銅蓋のツマミが取れて無くしてしまった。
こちらも完全に復元致します。
1万円〜2万円
上記は2L以下の一般的な大きさの鉄瓶のおおよその修理費用です。
戦前の鉄瓶には4Lなどの大きなものが多いですが、およそ3割位プラスの費用になります。
ともに修理後は日常使いできるようになります。
【修理までの手順】
修理ご希望の場合は弊店へお送りください。
数日で修理費用のご連絡を差し上げます。
お振込後の修理となります。
修理後にお返しする際はヤマトさんの着払いにてお戻しいたします。
修理は盛岡の鋳掛屋(いかけや)綱取がいたします。
伝統工芸士でもありますが個人で修理しておりますので比較的お安くは修理できていると思います。
修理が終わりましたら
その後の使い方などの説明書をご同封いたします。
お見積りは無料ですので、修理されない場合はそのまま着払いにてお返し致します。
修理期間は2〜5週間ほどになります。
以上となりますが、他なにかご不明な点がございましたら改めてお尋ねください。
有難うございました。
ヒバチヤ 番頭三浦
■最後に
江戸~明治時代の茶釜でも、直し直して長く使われてきた歴史があります。鉄瓶も同じように、適切な修理を重ねることで長くお使いいただけます。
まずは可能な限りオリジナルの状態を保つ方法を試み、必要な場合により確実な修理方法に移行する—。このような段階的なアプローチで、お客様の大切な鉄瓶の修理に取り組んでいます。
修理に関するご質問やご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフが丁寧にご説明させていただきます。
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